地名はいかで成り立つか(近代編)1

大字の成立、町村制

 あなたがどこにお住まいかは知りませんが、田舎に郵便を出す時、時に「大字(おおあざ)」と言う言葉が出てくるのではないでしょうか。
 あるいは、あなたが田舎者なのであれば、決して恥じることはありません寧ろ激熱です。
 東京はもちろん、全国の地名(の構造)を理解するうえで、自然村から行政村への転換は必ず押さえておくべきかと思いますので、簡単に解説いたします。

見出し

 1889年(香川県は1890年、沖縄県・北海道・ほか一部島嶼は別)に町村制と言う法律が施行され、それを以て現代に続く「行政村」と呼ばれるものが成立しました。すごくざっくり言うと、近代的な「自治体」になったと言うことです。詳しい話は(私が分からないので)省きますが、条文では「第一条 町村ハ従来ノ区域ニ依ル」としているものの、実際は複数町村をまとめてある程度の規模感に編成しなさいと言う旨の訓令が出ていて、大多数の町村は単独ではなく併合によって町村制を施行しました。これを「明治の大合併」と言うこともあります。

 上の図は自然村が4つある様子です。(架空の地図です)近代以前のことには明るくないので、そもそも村と言うのがどのように成立したかと言う点については解説できないのですが

町村制の施行によって、このように複数の村が合わさって新制の村(行政村)になるわけです。そして、もともとの村の名前と範囲は、「大字」として引き継がれるのです。
 少しわかり辛いので、この4つの村に名前をつけてみましょう。

ついでに郡名を付けました。言うまでもなく、日本の市区町村のうち、町と村は郡に属します。(東京島嶼部は除く)
上の図では、並木村、青木村、丸山村、岩田村とありますね。さすがに村が4つしかない郡と言うのは考えにくいので、この図に描かれていない部分にもたくさんの村があるのでしょうね。

1889年頃でしょうか、村制が施行され、4ヶ村が併合されました。そうすると、従来村だった部分は「大字」になるわけです。
新しい村の名前は何にしましょう。もし旧青木村が一番発展しているようなら、「青木村」に、どこも微妙な感じならば、「栄村」的な、適当なめでたげな名をつけるでしょうか。
 件の内務大臣訓令を引用します。

合併ノ町村ニハ新タニ其ノ名称ヲ選定スベシ。旧町村ノ名称ハ大字トシテコレヲ存スルコトヲ得。尤モ、大町村ニ小町村ヲ合併スルトキハ、其ノ大町村ノ名称ヲ以テ新町村ノ名称トナシ、或ハ、互イニ優劣ナキ数小町村ヲ合併スルトキハ、各町村ノ旧名称ヲ参互折衷スル等、適宜斟酌シ、勉メテ民情ニ背カザルコトヲ要ス。但シ町村ノ大小ニ拘ワラズ、歴史上著名ノ名称ハ、成ルベク保存ノ注意ヲナスベシ。
(明治21年6月13日内務大臣訓令第352号第6条。条文は鶴ヶ島町史に掲載されているものを参照。)

 

 と言うことで、もし青木村が栄えていて、そこに3ヶ村が編入されるような形なら「青木村」、旧名称を折衷するなら「田木山村」あたりでしょう。つづきます。

2025/2/24

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