
| 内容は「彷徨の季節の中で」の第一章と結構重なっています。部分部分で、「彷徨」第一章のダイジェスト的な側面があります(違う話もありますが)。そう考えると、やはり「彷徨」は自伝的小説なんだなあと思う次第です。 「耐えて澄んで」のお弁当前後のくだりは、「彷徨」にも似た描写があるし、「罪と業」で辻井さんがお話しされていた事とも一致します。全部が全部、本当の話では無いだろうけど、「概ね本当」なんだろうなあ。 「彷徨の季節の中で」も良いですが、個人的にはこの「幼い光景」の文体が好みです。あれは小説でこれは随筆と言う違いはありますが、何というか、これは辻井さんらしさが良く出ているというか。私の好きな辻井喬が詰っている感じがします。 「菜の花幻想」で、菜の花の明るさの中に、「明るさの故に少し物憂げである」ことを見出してしまう辻井さんの感性が本当に好きで、こう言う所が、私が辻井喬と言う作家に惹かれる所なんですよね。 「旅情の記憶」も良いですね。「旅をしている状態が実は目的なのだと言う旅行」は私の散策そのものなのですが、歳を取ると、あるいは偉くなってしまうと、そういうことが出来なくなってしまうのかな。
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