中身のない読書感想文

稀品きほん堂の終り(辻井喬「国境の終り」より)


あらすじ

 山の手のどこかにある画廊「稀品堂」を経営する大沢が主人公。大沢とその恋人?で美容室を経営する稲葉光子を中心に物語が進みます。

感想のようなもの

 読みやすかったです。中盤以降は、辻井さんの消費社会に対する考え方が何となく透けて見えてくる気がしました。
 光子がフランチャイジーになることを逡巡するシーンがそうでしょう。光子の中にあるチェーン店に対する否定的な考えは、まるで同じものが私の中にあります。
ネタバレまあ結局光子は自分の店をフランチャイジーにする決断をするわけですが

ネタバレ

見解 大沢も光子も、個人経営であることに対するプライドを持っているのでしょう。鮑の肝のシーンの、「その都度工夫するところに、稀品堂の商売の面白みがあると思っていたんだけど」と言う台詞が、全てを物語っている気がします。
 大沢は順一に稀品堂を継がせ、光子は自分の店をフランチャイジーにする。それで以て、余生を二人の時間にする、と言う選択をする訳ですが、ラストシーンでの大沢の予期しない悲しさは、何やかんやで今まで励んできた仕事から勇退する寂しさなのではないでしょうか。
 それが「稀品堂の終り」なのだと私は読みました。おそらく順一は、「稀品堂」と言う名前を変えてしまうことでしょう。

備考

初出誌:「海燕」1990年2月号
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